脊髄小脳変性症(Spinocerebellar Degeneration,SCD)は脊髄小脳失調症(Spinocerebellar Ataxia,SCA)とも呼ばれる進行性で稀な神経疾患で,妊娠・分娩・産褥期におけるマネジメントについての詳細な報告はほとんどされていない.今回SCDの中で本邦で最も頻度の高いSCA3(Machado-Joseph病)の症例を経験した.28歳で発症しSCA3と診断された32歳の初産婦が,妊娠34週6日当科に紹介され,切迫早産およびリハビリテーション目的で入院した.前医では小脳性運動失調を指摘され身体的なリハビリテーションが行われていたが,高次脳機能障害の指摘はなかった.入院中の行動から高次脳機能障害を疑い,知能検査を行って,処理速度や認知・記憶能力の低下を認めた.知能検査の結果から,忘却防止と情報共有のため「メモリーノート」を使用して育児を行う事や,母児の転倒転落防止のための「環境整備」を指導するリハビリテーションを行った.妊娠38週1日,自然陣痛開始し経腟分娩した.退院後の育児支援を含めた準備を行い,産後11日目に退院した.SCDは高次脳機能障害を示す可能性があり,育児に対して身体的のみならず認知行動の面でもリハビリテーションが必要である.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp