胎児心房粗動は胎児水腫や胎児死亡につながるため,正確な診断や適切な治療が必要である.当院で経験した胎児心房粗動の経過について報告する.2008年1月から2018年12月までに当院で胎児心房粗動と診断されたのは4例で,先天性心疾患はなかった.母体年齢は中央値32歳(30~38),診断時週数は中央値30週(29~38)であった.3例は胎児心臓超音波断層検査と胎児心磁図で,1例は胎児心臓超音波断層検査で診断された.胎児心房粗動はいずれも2:1伝導で,心室拍数は平均223 bpm(210~240)であった.4例中3例は経胎盤的に抗不整脈薬を投与することで妊娠を継続可能であった.1例は妊娠38週であったことから速やかに児を娩出し,電気的除細動により洞調律に回復した.胎内治療開始から洞調律回復までの日数は中央値3日(2~8)であった.いずれも母体副作用はなかった.多剤併用した1例では洞調律回復後に胎児心拍数が110 bpmであったため,胎児well-beingの他,胎児心機能や胎児房室時間やQT時間などを評価して治療を継続した.4例全例で胎児心房粗動の再発はなかったが,胎内治療の1例で出生後に持続性心室頻拍が認められた.これまで胎児心房粗動の診断に胎児心磁図を用いた国内での報告はなく,本報告が初めてである.基礎疾患のない胎児心房粗動の転帰は良好であるが,洞調律回復後も慎重な経過観察が必要である.
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