症例は67歳.骨盤臓器脱に対して腹腔鏡下骨盤臓器脱手術を予定していたが,術中右卵巣に白色の約1.5 cm大の乳頭状増殖を伴う結節と骨盤内に多数の播種結節を認めたため,腹腔鏡下右付属器摘出術および腹膜播種生検のみ施行した.病理学的に,右卵巣内には繊毛を有する一層の円柱上皮で裏打ちされた大小の囊胞が散在性にみられ,一部で核腫大,多層性増殖,低乳頭状増殖を伴っており,周囲間質には繊維の増生を認め,基底膜は保たれていた.腹膜播種結節は,後腹膜の成熟脂肪織内にも小管腔形成,乳頭状構造,小囊胞状拡張を示す腫瘍細胞の増生像を認め,右卵巣の腫瘍細胞との類似性もあり,腹膜インプラントと考えられ,腺線維腫の像を呈する卵巣漿液性境界悪性腫瘍の診断となった.造影CT検査で明らかな転移所見はなく,初回手術から約1か月後に根治術目的に腹式単純子宮全摘術,大網切除術,腹膜播種結節切除術,膀胱底形成術,前腟壁形成術を施行した.最終診断を卵巣漿液性境界悪性腫瘍IIIB期,pT3bNXM0とし,現在最終治療から9か月で再発なく経過している.
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