子宮動静脈瘻は大量性器出血の原因となる疾患である.治療としては子宮動脈塞栓術が主流となっているが,治療後の妊娠や分娩に関する報告はまだ少ない.今回,子宮動静脈瘻に対する子宮動脈塞栓術後に妊娠し,正常経腟分娩となった症例を経験したので,これまでに報告された子宮動脈塞栓術後の分娩39例とともに提示する.
32歳,4妊2産.人工妊娠中絶(21歳時)の既往があった.第2子の妊娠中(26歳時)に子宮動静脈瘻を指摘された.第2子の妊娠分娩経過には問題なかった.第2子分娩の1年後に大量性器出血による出血性ショックとなり,子宮動静脈瘻による出血と診断,両側の子宮動脈塞栓術を施行された.その後第3子を自然妊娠し,経過に異常を認めず,妊娠39週で正常経腟分娩となった.児は3,305 gの男児,Apgar score 1分値8点,5分値9点,臍帯動脈血pHは7.313であった.分娩時出血量は795 mlであった.産褥経過も順調であった.子宮動脈塞栓術後妊娠の合併症としてこれまで報告されている胎児発育不全(FGR)や前置胎盤,常位胎盤早期剝離などは,本症例では認められなかった.子宮動静脈瘻・子宮動静脈奇形の子宮動脈塞栓術後の周産期予後の把握のためには,今後さらなる症例の蓄積が必要である.
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