急性虫垂炎は,妊娠中に発症する急性腹症の中でも頻度は高いが,周産期予後に与える影響も大きい.今回,妊娠中に急性虫垂炎と診断し,入院加療を行った3症例を経験した.1症例目は妊娠31週3日に右下腹部痛を呈し,かかりつけ医を受診した.急性虫垂炎が疑われた為,前医へ搬送となり腹式虫垂切除術を施行した.術後3日目に急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome,以下ARDS)を発症したため当院へ転院搬送となった.母体の全身状態悪化および切迫早産に対して,当院にて緊急腹式帝王切開術を施行した.2症例目は妊娠20週1日に右下腹部痛を呈したため当院を受診し,急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後11日目に退院し,妊娠37週5日に自然陣痛発来となり,妊娠37週6日に経腟分娩に至った.3症例目は妊娠23週2日に右下腹部痛と下痢症状を呈した為,当院を受診し,急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後8日目に退院し,妊娠38週5日に計画無痛分娩にて経腟分娩に至った.症例1では母体適応で早産に至ったが,症例2および3では外科手術後の周術期における早産には至らず,妊娠満期で生児を得た.妊娠中の急性虫垂炎は外科との密な連携の上,治療を行う必要がある.
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