もやもや病合併妊娠の分娩様式としては,帝王切開が選択されることが多いが,最近では,硬膜外鎮痛による経腟分娩の報告も散見される.もやもや病合併妊娠に対して硬膜外鎮痛を施行しながら経腟分娩となった一例を経験したので報告する.症例は29歳初産婦で,小学生時にもやもや病と診断された.アスピリン内服治療後の経過は良好であった.分娩様式として,硬膜外鎮痛を用いた無痛分娩により血圧変動を抑えることが出来れば経腟分娩が可能と考え,無痛分娩を行う方針となった.妊娠38週5日に入院予定であったが,同日朝より陣痛発来し緊急入院となった.入院直後に硬膜外カテーテルを留置し,オキシトシン点滴による陣痛促進を開始した.硬膜外麻酔による単回投与を用いて疼痛管理を図った.子宮口全開大後,児頭がstation+3まで下降したところで,怒責による血圧上昇を軽減するため,吸引分娩で児を娩出させた.分娩中の血圧変化において,顕著な上昇・低下は認めなかった.産褥経過に問題はなく産後6日目に退院した.もやもや病合併妊娠時には疼痛による血圧上昇から引き起こされる脳出血や,過換気や努責による胸腔内圧上昇から引き起こされる脳虚血発作が問題となる.無痛分娩患者は自然分娩と比較して血圧変化と脳血流変化が小さくなると報告する研究があることからもやもや病合併妊娠では無痛分娩を併用し血圧と脳血流の安定化を図ることで経腟分娩は可能と考えられる.
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