【緒言】ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は母子感染を引き起こすが,母子感染予防対策が行われることでその感染率は劇的に低下し,本邦は0.6%に抑制されている.
2020年1月時点で本邦では「HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン」と「HIV母子感染予防対策マニュアル第8版」に則り診療が行われている.
今回未受診かつ陣痛発来後に当院へ搬送され,入院時のスクリーニング検査でHIV感染が強く疑われた外国人症例の対応を経験したので報告する.
【症例】23歳2妊1産.妊娠に気づくも健診は受けていなかった.破水感で救急要請し当院へ搬送された.入院時のHIV抗原抗体検査が陽性,HIV抗体が557 S/CO(正常上限0.99)と高値でありHIV感染が強く疑われた.抗体価が高値であり母体のHIV感染の可能性は濃厚で,治療歴もなく母子感染リスクは高いと判断.分娩方法は帝王切開を提示するも同意を得られず経腟分娩となった.分娩時の母体へのジドブジン(AZT)投与は本症例では間に合わなかった.出生児はAZTの他2剤の内服を速やかに開始した.産褥2日に母体のHIV感染が確定した.
【考察】未受診HIV感染妊娠症例は,診断確定前,未治療で分娩に至るケースが多く,帝王切開を行う時間がないことがある.未受診症例のHIVスクリーニング陽性およびHIV感染合併への対応は施設内で確認・周知しておく必要がある.
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