成熟囊胞性奇形腫の悪性転化の中で,悪性腫瘍成分が浸潤癌ではなく上皮内癌に留まる状態で発見されることは大変稀である.10年来の経過観察中に増大を認めた卵巣腫瘍に対して腹腔鏡による腫瘍核出術を行い,成熟囊胞性奇形腫に扁平上皮の上皮内癌を伴っていた症例について報告する.
患者は37歳,3妊3産,近医で左卵巣腫瘍の経過観察を受けていたが,1~2年の間に増大傾向を認めたため当科紹介となった.X-12年の骨盤MRI検査では内部に脂肪を含む20×22 mmの左卵巣腫瘍を認めており,当科紹介時の再検査では49×41 mmと腫瘍の増大がみられた.腫瘍マーカーはCEA 11.0 ng/ml(基準値<5 ng/ml)と高値である他に異常はなかった.成熟囊胞性奇形腫の術前診断で腹腔鏡下左卵巣腫瘍核出術を行い,扁平上皮の上皮内癌を伴う卵巣成熟囊胞性奇形腫の術後診断に至った.追加治療に関して他院にセカンドオピニオンを依頼し,卵巣悪性腫瘍に準じて対応する事で意見が一致した.妊孕性温存を考慮し,初回手術後2か月で腹式左付属器摘出術,大網切除術を行った.摘出組織に残存病変を認めず,悪性所見は認められなかった.術後約3年にわたり再発,転移を認めていない.
症例の希少さから,手術後に判明したこの様な症例の取り扱い指針は未だ定まっていない.複数の類似症例報告と共に,初回手術後の治療について検討した.
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