【目的】既往帝王切開後前置胎盤のMRI所見から,術前に出血リスクを予測することが可能か検討する.
【方法】2010年1月から2019年9月の間に,当院で経験した既往帝王切開後前置胎盤30例(子宮温存群10例,子宮全摘群20例)を対象とし,骨盤部MRI T2強調の画像所見において,帝王切開瘢痕部に相当する子宮体下部前壁の所見(flow void,胎盤の子宮筋層への突出,胎盤と子宮筋層との境界不整,胎盤の子宮筋層への浸潤)をスコア化し,「MRI診断スコア」(0~5点)として,術中出血量,輸血量,胎盤剝離の可否,内腸骨動脈バルーン閉塞の有用性との関連を後方視的に検討した.
【成績】30例の平均出血量は1,952 gで,25例で輸血を要した.MRI診断スコアと胎盤剝離を試みた13例,胎盤剝離を試みずに子宮全摘術を行った17例ともに術中出血量に正の相関がみられた(相関係数:それぞれ0.576,0.7342).胎盤剝離を試みた13例のMRI診断スコアは全例3点以下であり,うち10例で子宮温存が可能であった.また,MRI診断スコア3点以下の症例では,手術時の内腸骨動脈バルーン閉塞の有無による出血量に有意差はなかった.
【結論】「MRI診断スコア」により,既往帝王切開後前置胎盤症例の出血量を予測できる可能性が示唆された.本スコア3点以下は,危機的出血のリスクが比較的低く,手術時に内腸骨動脈バルーン閉塞なく,胎盤剝離を試みることも許容されると考えられた.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp