がん治療医においても小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存に関する認識が広がり,疾患治療後に温存胚を用いて妊娠に至る例が散見される.しかし,本邦では未だ本医療の成績に関する検証はなされていない.今回我々は,自験例をもとに妊孕性温存胚を用いた生殖医療の有効性と安全性を検証した.2010年1月から2020年4月の間に,当院で医学的適応による胚凍結保存を行い,がん治療後に胚移植された31例52周期を対象に,後方視的検討を行った.胚凍結時年齢は36.1±3.7歳,AMH(Anti-Mullerianhormone)値5.84±3.74 ng/mlであり,採卵回数は1.4±0.6回,胚凍結個数3.4±2.6個であり,温存胚の移植時年齢は39.1±3.7歳,移植回数は1.7±1.0回であった.妊娠例は13例(14周期)あり,周期あたり妊娠率は26.9%(14/52周期),患者あたり妊娠率は41.9%(13/31例)であった.妊娠例は全て単胎で,出生体重の平均値は2,624±334 g,分娩様式は全例が帝王切開であり,2例が分娩停止,2例が前置胎盤であった.出産例にがんの再発や児の先天異常は認めなかった.本検討結果から妊孕性温存胚を用いた生殖医療は有効であり安全であることが示された.今後は,日本がん・生殖医療登録システム(JOFR;Japan Oncofertility Registry)による長期的かつ大規模な症例の蓄積,検証が望まれる.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp