妊娠中期以降で片側臍動脈閉塞が生じた報告は稀であり,臨床的意義は明らかになっていない.今回,妊娠中期に片側臍動脈閉塞が原因と考えられる一過性の胎児機能不全を生じ,その後に改善が認められ経腟分娩に至った症例を経験したため報告する.
症例は28歳の初産で,他院で妊娠管理されていた.妊娠27週4日の妊婦健診時に胎児発育不全,羊水過少,反復する一過性徐脈を認め当院に搬送された.それまでの妊婦健診では2本の臍動脈が確認されていたが,入院時に右臍動脈閉塞が疑われた.早期娩出に備えベタメタゾンを投与し,連日の超音波検査と胎児心拍数陣痛図で慎重に経過観察したところ,妊娠28週より羊水量が増加し,胎児心拍数陣痛図もreassuring patternに改善した.発育停止を来たさず児のwell-beingも保たれていたため,妊娠33週1日に退院とした.妊娠36週1日に妊娠高血圧腎症のため再入院し,分娩誘発を行い妊娠38週4日に経腟分娩に至った.児は2,496 gの女児で,Apgar score 6/9,臍帯動脈血はpH 7.30で生後1年10か月の時点で発育発達に異常はない.病理検査で臍帯動脈の1本は閉塞していた.
妊娠中期以降の片側臍動脈閉塞例はこれまで8例の報告があり,胎児機能不全で帝王切開または胎児死亡した報告が多い.本例でも発症時に胎児機能不全を生じたが,比較的早期に対側臍動脈血流量が代償性に増加したことで児の状態が改善したと考えられた.原因不明の胎児機能不全では臍動脈血流も観察することが重要と考える.
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