解離性昏迷は心理的ストレスに引き続いて昏迷をきたす状態で,外部の状況を認識しながらも意思の発動を著しく欠いた状態である.意識障害をきたす他の疾患と似た病態を呈し,鑑別が困難な場合がある.分娩中に意識障害をきたし,最終的に解離性昏迷と診断した症例を報告する.南アジア出身,22歳の初産婦で妊娠経過は問題なかった.妊娠40週に前期破水のため入院とした.分娩中血圧が高血圧非重症域で経過した他,異常はなかった.第一期続発性微弱陣痛の診断で陣痛促進開始30分後にJapan Coma Scale(JCS)300となった.母体のバイタルサインは血圧が146/94 mmHgであった以外は正常であり胎児心拍はreassuring fetus statusであった.血液検査・心臓超音波・頭部CTで異常はなく,arm drop testが陽性であり,器質的疾患は否定的と考えた.従命不可能な状態が継続したため帝王切開で分娩とした.手術開始時から意識は改善傾向となり,翌日にJCS 0となった.意識改善後,分娩中の記憶の欠損はないこと,以前に同様の経験があったことを確認した.精神科医の診察後,解離性昏迷の診断とした.意識障害の再燃はなく,血圧も正常域で経過したため術後6日目に退院,一か月健診で問題なく終診とした.意識障害の鑑別には脳卒中などの器質的疾患をはじめ,精神疾患も考慮する必要がある.分娩中の意識障害に対しては,系統立てた鑑別診断が重要と考えられた.
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