Hyperreactio Luteinalis(黄体化過剰反応:HL)は,妊娠や絨毛性疾患で血中HCGに反応し,莢膜黄体化囊胞による両側卵巣腫大を呈する稀な疾患である.今回,胞状奇胎の治療中にHLと診断した症例を経験したので報告する.症例は26歳,2妊0産(自然流産,今回妊娠).胞状奇胎の診断で妊娠10週2日に当院に紹介受診された.血中HCGは1,849,900 mIU/mlであり,経腟超音波検査で子宮内に10 cmの囊胞状充実成分を認めた.子宮内容除去術(Day 0)を施行し全胞状奇胎と診断された.術後両側卵巣がDay 6に8 cm,Day 13に9 cm,Day 25に15 cmと急速に腫大した.充実部分は認めず隔壁の薄い大きさがそろった多房性囊胞であった.初診時は卵巣腫大なく,胞状奇胎であることからHLと診断し経過観察とした.腹部膨満感と軽度腹痛を認めたが非ステロイド抗炎症薬で対処可能であった.全胞状奇胎は経過非順調型でMethotrexate投与を開始した.HLは徐々に縮小しDay 96に正常大卵巣に改善した.HLは自然軽快する疾患であり診断が重要である.卵巣境界悪性腫瘍との誤認や,茎捻転のリスクがあり卵巣温存を目指した対応が必要である.胞状奇胎に続発したHLの1例を経験した.胞状奇胎の管理中に両側性多房性の充実部分を欠く卵巣腫大を認めた場合はHLを考慮すべきである.
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