子宮峡部妊娠は,子宮頸部の解剖学的内子宮口と組織学的内子宮に妊卵が着床するものである.子宮峡部妊娠は癒着胎盤のリスクが高く,分娩時に大量出血をきたす.また安易な子宮内容除去術も大量出血を誘発し子宮温存が困難となりうる.今回メトトレキサート(MTX:Methotrexate)を投与した後,子宮鏡下胎囊切除術(TCR-G:trans cervical resection-Gestational Sac)を施行し子宮を温存しえた症例を経験したので報告する.
症例は36歳,3妊0産.他院にて体外受精―融解胚移植で妊娠に至るも,妊娠8週時子宮腔の低位置に胎囊を認めると診断され,当院を受診した.超音波断層法,MRIにて子宮峡部妊娠と診断し,子宮温存を目指し妊娠9週よりMTXの全身投与を施行した.血中hCG値は60.4 mIU/mlまで低下するも,投与3ヶ月後にも胎囊は娩出されず,その後血中hCG値は軽度上昇,また超音波カラードプラ法で少ないながらも血流を認めていた.このためTCR-Gを施行し,胎囊を除去した.術中・術後の出血は少量であり,子宮動脈塞栓術(UAE:Uterine Artery Embolization)および子宮摘出術を行うことなく翌日退院となった.MTX投与後のTCR-Gは,子宮峡部妊娠に対する子宮温存を目的とした治療法の選択肢であることが示唆された.
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