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第59巻 第1号

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症例報告
体部癌肉腫との鑑別を要した子宮頸部癌肉腫の1例
増田 怜良, 野口 大斗, 川畑 絢子, 鈴木 二郎, 竹中 将貴, 飯田 泰志, 柳田 聡, 矢内原 臨, 岡本 愛光
東京慈恵会医科大学附属病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 59(1):39-47, 2022

 子宮頸部癌肉腫は上皮性間葉性混合腫瘍として分類される稀な腫瘍で,術前診断が困難な疾患として周知されている.症例は2妊2産,閉経45歳,79歳女性.不正性器出血を主訴に前医を受診し,子宮頸部悪性腫瘍の疑いで紹介となった.初診時,腟鏡診にて子宮頸管に突出し腟壁への軽度の浸潤を疑う小指頭大の腫瘤を認めた.内診所見は明らかな子宮傍組織浸潤は認めなかった.子宮頸部腫瘍の細胞診ではHPV感染を伴うOther-malig(Bethesda classification)の診断であった.組織検査では一部神経内分泌分化を伴う扁平上皮癌の診断であった.腫瘍マーカーに有意な異常は認めず,骨盤造影MRIおよび頸部から骨盤腔までの造影CTでは子宮頸部に2.3 cmの腫瘤を認め,遠隔転移は認めなかった.以上より,子宮頸癌Stage IIA1の診断で広汎子宮全摘出術,両側付属器摘出術を施行した.病理検査においては高異型度癌腫成分と高異型度肉腫成分が混在する腫瘍で,腟壁浸潤は認められなかった.腫瘍の茎部は高位頸部後壁に位置し,周囲は頸部扁平上皮に囲まれ,正常頸管腺が認められた.腫瘍周囲にCIN病変が存在し,またp16免疫組織化学染色が陽性のため,子宮頸部原発の癌肉腫:pT1b1N0(UICC 8th),Stage IB2(FIGO2018)と診断した.術後補助療法として同時化学放射線療法を施行し,現在経過観察を行っているが再発なく術後12か月が経過している.本症例のように,頸部と体部境界に発生した子宮頸部癌肉腫の術前診断は,臨床症状だけでは子宮頸癌はもとより子宮体部癌肉腫との鑑別は困難である.しかし発生元が,頸部由来か体部由来かの鑑別は手術療法の術式に関与し,予後にも影響するため重要な項目と言える.そのため,術前診断に懸念を生じた症例に対しては漠然と検査を行うべきではなく,癌肉腫という病態を常に想起し,細胞診,組織診の再検討,子宮頸管キュレットの施行も考慮にいれ,術前から病理医,放射線科医を交えた症例検討を重ね,正診率の向上に努める体制が肝要である.

Key words:cervical carcinosarcoma, therapy, diagnosis
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