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第59巻 第4号

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症例報告
膵癌原発転移性卵巣腫瘍の2例
浅野 史男, 西ケ谷 順子, 片山 紗弥, 澁谷 裕美, 百村 麻衣, 松本 浩範, 森定 徹, 小林 陽一
杏林大学産科婦人科学教室
関東連合産科婦人科学会誌, 59(4):461-468, 2022

 我が国における転移性卵巣腫瘍の頻度は卵巣悪性腫瘍の8~23%を占める.今回我々は,切除不能膵癌の卵巣転移に対し腫瘍減量術を施行した2例を経験したので報告する.症例1は64歳,膵体尾部癌に対し腫瘍内科でmFOLFIRINOX(オキサリプラチン+アイソボリン+イリノテカン+フルオロウラシル)を施行した.腫瘍の縮小とCA19-9の改善を認めたが,その後両側卵巣腫瘍の出現と腹部症状を認め,CA19-9の再上昇も認め,合計22コース終了時点で,両側付属器摘出術を施行した.症例2は60歳,腹部膨満感および腹痛を主訴に当科受診.卵巣癌が疑われたが,精査にて膵体部癌の診断となった.膵体部癌に対し腫瘍内科でmFOLFIRINOXを施行した.腫瘍の縮小は認めないもののCA19-9の改善を認めたが,その後右卵巣腫瘍の増大と腹部症状を認め,CA19-9の再上昇も認め,合計26コース終了時点で,両側付属器摘出術を施行した.いずれの症例も切除不能膵癌であり,標準治療中に卵巣腫瘍の増大を認め,腫瘍内科担当医および患者本人と相談の上,手術を施行した.膵癌原発の転移性卵巣腫瘍の予後は数か月程度という報告もあり,手術療法の有用性は明らかになっていないが,本症例のように腹部症状がQOL低下につながる場合には,症状緩和目的に手術療法も考慮されうると考えられた.

Key words:Pancreatic cancer, Ovarian cancer, Metastasis
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