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第59巻 第4号

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症例報告
妊娠16週の右下腹部膿瘍に対し,腹腔鏡下で急性虫垂炎と診断し治療した1例
堀 祥子1), 杉山 将樹1), 清水 芳政2), 横塚 慧2), 坂場 大輔1), 明樂 一隆1), 小島 七瀬1), 豊澤 秀康1), 島田 佳苗1), 満川 元一1)
1)水戸赤十字病院産婦人科
2)水戸赤十字病院外科
関東連合産科婦人科学会誌, 59(4):487-492, 2022

 急性虫垂炎は,妊娠中に発症する外科的疾患の中で最も頻度が高いことで知られている.妊娠中の生理的な白血球の上昇や,子宮の拡大に伴う虫垂の解剖学的位置の変化のため,診断に難渋することが多い.妊娠による免疫能の低下と診断の遅れから重症化しやすく,子宮にも炎症が波及すると流産や死産の可能性が高くなる.今回我々は,妊娠16週で急性虫垂炎を発症し,腹腔鏡で診断し治療した1例を経験した.症例は42歳の初産婦で,妊娠16週0日,予定の妊婦健診で右下腹部痛を訴えていた.発熱はなく,症状は軽度であり,慢性的な便秘を訴えたため,便秘による症状と判断し外来で経過観察とした.4日後に腹部症状が増悪し,予約外で受診となった.体温37.1℃,血液検査で炎症反応が高値であった.腹部超音波検査では回盲部周囲に膿瘍を疑う低吸収域を認めたが,典型的な虫垂炎像と異なり診断には至らなかった.診断確定と治療のため緊急で審査腹腔鏡を施行し,急性虫垂炎,及び穿孔に伴う腹膜下膿瘍の診断に至った.腹腔鏡下虫垂切除術,膿瘍ドレナージ術を施行.術後,膿瘍の残存を認めたが,ダグラス窩に挿入したドレーンを術後5日目まで留置し,執刀時より開始したtazobactam/piperacillinの投与を継続したところ軽快した.妊婦中に右下腹部の疼痛を認めた場合は血液検査や腹部超音波検査を行い,虫垂炎の鑑別を積極的に行う必要がある.

Key words:acute appendicitis, pregnancy, laparoscopic surgery, diagnosis, ultrasound examination
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