【目的】前置胎盤ならびに低置胎盤は分娩時の大量出血が問題となる.内子宮口から胎盤辺縁までの距離が出血量の多寡と関連することは知られているが,定量的にその関連性を評価した報告は少ない.本研究は,前置胎盤ならびに低置胎盤を対象に,帝王切開術時の出血量と周産期因子ならびに医療介入との関連を検討することを目的とした.
【結果】解析対象の内訳は,全前置胎盤11例(部分前置胎盤1例含),辺縁前置胎盤7例,低置胎盤16例であった.いずれの胎盤位置異常においても出血量および輸血実施率は帝王切開術が施行された常位胎盤例に比し有意に多かった.自己血輸血が施行された症例を除く全例を用いたROC解析により,輸血を要する大量出血のカットオフ値は2,350 mlであった.全前置胎盤例および低置胎盤例においてカットオフ値を超える出血を予測する周産期因子は認められなかった.一方,前置胎盤例では,子宮口を覆う胎盤の距離と出血量については相関を認めた.低置胎盤例では,胎盤の位置および胎盤の厚さと出血量に相関はなかった.
【結論】胎盤位置異常症例に対して帝王切開術を施行する場合,輸血を要する大量出血を予測する臨床的な周産期因子は明らかでなかった.前置胎盤では内子宮口を覆う胎盤の距離が長いほど,出血量が増加することに留意し,高次施設での管理が望まれる.
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