排卵誘発により卵巣過剰刺激症候群(Ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)が発症し,まれに卵巣出血や茎捻転の原因となる.今回,クロミフェンクエン酸塩で妊娠成立後にOHSSによる腫大卵巣の茎捻転を発症した症例を経験したので報告する.
34歳1妊0産.クロミフェンクエン酸塩50 mg/日を5日間投与され,タイミング療法で妊娠成立した.妊娠7週2日で左卵巣は7 cm大に腫大し,軽度のOHSSを発症し,経過観察していた.妊娠8週2日に左下腹部痛を主訴に再度受診し,腫大卵巣の茎捻転で当院に緊急搬送となった.
経腟超音波検査で8 cm大の左卵巣の腫大があり,中等度OHSSによる腫大卵巣の茎捻転疑いで緊急手術を施行した.臍部より開腹して腹腔鏡で観察したところ,暗紫色に変化した8 cm大の左付属器がみられ,時計回りに900度捻転していた.左付属器の捻転を解除したところ,速やかに左卵管が暗紫色から赤色調に変化した.左卵巣の内容液を吸引して結紮縫合し,手術を終了した.術後3日目の左卵巣径は3.7 cmに縮小し,腹水はなかった.児の心拍を確認し,術後3日目に退院とした.その後,再発なく経過し,妊娠38週3日に自然経腟分娩で2,356 gの男児を出生された.
妊娠中のOHSSによる腫大卵巣の茎捻転に対して早期の腹腔鏡下手術は診断・治療を兼ねた有効な方法であると考えられる.
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