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第60巻 第1号

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症例報告
低異型度尿路上皮癌に悪性転化した卵巣成熟奇形腫破裂の1例
趙 現1), 高橋 慎治1), 栗田 綾花1), 丸山 享子1), 林 立弘1), 松井 浩之1), 岡田 喜親1), 馬場 健2), 芹沢 麻里子1)
1)浜松医療センター産婦人科
2)浜松医療センター病理科
関東連合産科婦人科学会誌, 60(1):79-86, 2023

 卵巣成熟奇形腫の悪性転化は1~2%とされており,その内,扁平上皮癌が約80%を占める.腺癌やカルチノイドなどの報告も散見され,尿路上皮癌の報告は稀である.今回低異型度尿路上皮癌に悪性転化した卵巣成熟奇形腫破裂の1例を経験したので報告する.
 症例は54歳,3妊2産,53歳閉経.急激な腹痛のため,近医を受診し,20 cmほどの巨大卵巣腫瘍と多量の腹水を指摘され,当科紹介となった.SCC6.6 ng/ml,CA125 42.5 U/ml,CA19-9 195 U/ml,CEA5.2 ng/mlと軽度上昇していた.症状と画像所見から卵巣腫瘍の破裂と診断し,緊急腹式両側付属器摘出術を施行した.摘出腫瘍の免疫染色でGATA3+,p63+,p40+,CK5/6+であり,病理診断は低異型度非浸潤性乳頭状尿路上皮癌へ悪性転化した卵巣成熟奇形腫であった.腹水細胞診は陰性で,手術病期はFIGO stage IC2期となった.初回術後,化学性腹膜炎を合併したため,追加のstaging laparotomyを完遂出来なかったが,現在術後化学療法を行わず,17か月再発所見なく経過している.
 尿路上皮癌へ悪性転化した卵巣成熟奇形腫は,稀な組織型であるためその生物学的特徴について明らかではないところも多い.そのため,過去の症例について考察を行うものの,更なる症例の集積による検討が必要であると思われる.

Key words:mature teratoma, malignant transformation, urothelial carcinoma
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