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第60巻 第1号

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症例報告
抗NMDA受容体抗体脳炎治療中に卵巣成熟奇形腫が顕在化した一例
築比地 彩香, 板垣 博也, 久保谷 託也, 岩田 成志, 天神林 友梨, 志鎌 あゆみ, 田坂 暢崇, 秋山 梓, 中尾 砂理, 水口 剛雄, 佐藤 豊実
筑波大学医学医療系産科婦人科学
関東連合産科婦人科学会誌, 60(1):87-92, 2023

 抗NMDA受容体抗体脳炎は脳炎発症時に卵巣成熟奇形腫を認めることが多いが,非腫瘍合併例と診断された後に卵巣成熟奇形腫が出現することは稀である.今回,脳炎治療中に卵巣成熟奇形腫の顕在化を認めた一例を経験したので報告する.
 32歳,1妊0産.腹痛,嘔吐を主訴に近医入院後,意識障害及び異常言語が出現し,当院神経内科に転院した.失調性呼吸,眼球運動障害が出現し,自己免疫性脳炎が疑われ,免疫療法が施行された.髄液中に抗NMDA受容体抗体を認めたが,腹部MRIでは卵巣成熟奇形腫を疑う所見はなく,非腫瘍随伴性抗NMDA受容体抗体脳炎と診断された.人工呼吸器管理のもと,治療を継続され意識レベルは改善したが,短期記憶障害や逆行性健忘は残存し,治療開始後6週で不随意運動を認め,脳炎の再燃と判断された.下血の精査目的に施行したCT,MRIで左卵巣成熟奇形腫が疑われ当科紹介となった.神経症状が増悪する可能性を考慮し,腹腔鏡下左付属器摘出術を施行,病理診断は卵巣成熟奇形腫であった.術後1か月で神経症状は消失し,仕事復帰できるまで回復した.
 脳炎発症時には画像診断が困難であった微細な卵巣成熟奇形腫が,治療中に顕在化した一例を経験した.神経症状の残存や増悪を認めた際には,骨盤MRIの再検を行うなど卵巣成熟奇形腫の顕在化を見逃さない管理を要する.

Key words:anti-NMDAR encephalitis, ovarian teratoma, salpingo-oophorectomy, recurrence
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