【目的】未破裂脳動脈瘤を有する女性の分娩様式の明確な指針はない.非妊娠時に治療適応とされていない場合でも帝王切開が選択される傾向があるが,当院では慎重な血圧管理下の経腟分娩を行っている.本研究の目的は未破裂脳動脈瘤合併女性における適切な妊娠・分娩管理の検討である.
【方法】2016~2022年に当院で分娩管理を行った未破裂脳動脈瘤合併妊娠の診療録を後方視的に検討した.
【結果】未破裂脳動脈瘤は7人10妊娠で認められた.全例が妊娠前に脳動脈瘤と診断され,破裂のリスクが低いため経過観察中であった.脳動脈瘤は1人を除き単発であり,直径の中央値は4 mm(範囲1.7~5 mm),部位は脳底動脈先端部1人,中大脳動脈2人,内頸動脈1人,内頸動脈海綿静脈洞部1人,後大脳動脈1人,不明1人であった.分娩時は経時的な血圧測定を行い,分娩様式は産科的適応で決定した.分娩時妊娠週数は中央値39週(範囲37~40週),分娩様式は経腟が7分娩,帝王切開が3分娩(適応は分娩停止2人と既往帝切1人)であった.帝王切開例では術後に肺血栓塞栓症を1人,緊急降圧を要する高血圧を1人に認めた.全例で妊娠中から産褥1か月までの脳動脈瘤の破裂はなく,児の経過も良好であった.
【結論】未破裂脳動脈瘤を有する女性は経腟分娩も選択肢となる可能性があり,適切な妊娠・分娩管理の指針策定のために今後の症例の蓄積が必要である.
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