血清ビタミンDの充足が妊娠率の向上に関与するという報告が近年世界的に注目を集めている.本研究では,2016年1月から2021年12月までの間に,原因不明不妊症の適応で当院にて初回ホルモン補充周期凍結融解胚盤胞移植を行った未経妊の患者について,移植前30日以内に測定した血清25(OH)ビタミンD濃度が30 ng/ml未満の非充足群と30 ng/ml以上の充足群に分類し,胚移植あたりの臨床的妊娠率を後方視的に検討した.対象は157例で,このうちビタミンD非充足群は48例,充足群は109例で,胚移植あたりの臨床的妊娠率は,非充足群で41.7%(48例中20例),充足群で48.6%(109例中53例)と,充足群で高い傾向はあるものの有意差は認めなかった(p=0.42).一方で移植胚のうちGardner分類で3BB以上の形態良好胚の割合は,非充足群で72.9%(48例中35例),充足群で89.9%(109例中98例)と,充足群で有意に高かった(p=0.0064).形態良好胚に限定した移植あたりの妊娠率は,非充足群で48.6%(35例中17例),充足群で51.0%(98例中50例)と,有意差を認めなかった(p=0.80).
本研究の結果では,血清ビタミンD濃度の充足は,ホルモン補充下凍結融解胚盤胞移植において臨床的妊娠率を有意に上昇させる効果を認めなかった.
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