ほとんどの原発性卵巣腫瘍は,卵巣内部に発育するため内向性で囊胞性に発育する.しかし漿液性腫瘍には外向性発育を示す表在乳頭型という種類があり,漿液性腫瘍の1~2割程度とされる.これは漿液性腫瘍にみられる特徴的な発育形態であり,漿液性腫瘍の良性・境界悪性・悪性のいずれにも認められるが,卵巣腫瘍全体から見れば約2%と稀である.画像的にも原発性卵巣腫瘍としては非典型的な所見を示すため,術前診断に苦慮することがある.今回我々は,術前の画像診断上卵巣腫瘍としては非典型的な所見の腫瘤を右付属器に形成していたため,診断と治療を目的に手術を行い,術中肉眼所見では卵巣癌を疑ったが,病理結果は卵巣原発の漿液性境界悪性腫瘍(Serous borderline tumor:SBT)であった症例を経験した.外向性発育の漿液性腫瘍は術中肉眼所見で悪性の様に見えても,病理学的には良性や境界悪性の可能性もある.妊孕性温存が考慮される生殖年齢で発生することもあり,手術で摘出する臓器の判断は注意が必要である.そこで今回我々は,漿液性境界悪性腫瘍の発生過程や発育形態の特徴を,文献的考察を含め報告する.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp