正常妊娠の妊娠初期では,黄体ホルモンの分泌が維持されるため約0.5℃程度体温が上昇することが知られているが,異所性妊娠患者の体温に関する詳細な検討はこれまでされていない.今回我々は,異所性妊娠患者における発熱に関する検討を行ったので報告する.
2009年から2022年6月までに異所性妊娠の診断となった257例と,同時期に施行した婦人科緊急手術患者136例を対象とし,発熱の有無,および異所性妊娠患者における体温上昇のリスク因子の検討を行った.検討因子は年齢,経産,異所性妊娠部位,血中hCG値,妊娠週数,クラミジア感染の有無,性器出血の程度,腹腔内出血量と体温との関係を検討した.
異所性妊娠手術と他の婦人科緊急手術患者では,体温が36.9±0.5 vs 36.5±0.3℃(p=0.0006)と異所性妊娠患者で有意に体温が高かった.
異所性妊娠患者における体温上昇のリスク因子については,妊娠週数が早いほど体温が高い傾向(p=0.03)を認めたが,血中hCG値や腹腔内出血量を含めてその他の因子では体温との関連は認めなかった.
異所性妊娠は時に迅速な患者の全身評価と治療を要する.異所性妊娠患者は正常妊娠と同様に体温が高くなる傾向があり,治療に当たる際の発熱の評価には注意を要する.
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