悪性中皮腫は,中皮細胞由来の希少な腫瘍であり,原発巣は腹膜が胸膜に次いで多く,中皮腫全体の約10~30%とされる.術前診断は困難かつ確立した標準治療はなく,予後不良である.今回,寛解を維持している上皮型悪性腹膜中皮腫の1例を経験した.症例は76歳でアスベスト曝露歴はない.近医で腹水貯留を指摘され,頸部~骨盤造影CT検査で腹腔内脂肪織濃度上昇や腹膜結節を認めた.原発性腹膜癌の診断で試験開腹術を施行した.大網が肥厚し小結節を認め,部分切除した.術後病理組織診断で上皮型悪性腹膜中皮腫と診断した.ペメトレキセドとカルボプラチン併用療法を施行中に腹膜播種と腹水貯留の増悪を認めたため,がんゲノムプロファイリング検査を経て,治験への参加を検討したが,化学療法を6コース終了して奏効し,参加基準を満たさなくなった.現在,腫瘍は寛解し,Performance Status(PS)は1で診断から2年経過している.悪性腹膜中皮腫の予後良好因子として,女性,PS0~1,リンパ節転移および遠隔転移がないこと,上皮型などが挙がる.予後因子を検討しつつ,個々人にあった治療方針を選択することで寛解維持が期待できる.
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