56歳の閉経後女性で,10年前より子宮腺筋症を指摘されていた.下腹部痛で前医を受診し入院に至り,CT検査で骨盤内腫瘍を認め精査加療目的に当院に紹介となった.造影MRI検査ではT2強調像で不均一な高信号を認め,T1強調像で同部位に高信号を認めた.画像上子宮肉腫を疑い,腹式単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術を行った.子宮底部には9 cm大の正常子宮筋層と境界不明瞭な腫瘍を認め,腫瘍内腔は陳旧性血腫と壊死組織で充満していた.病理組織診断で子宮腺筋症病変から腫瘍組織への移行を認め,浸潤増殖する腺癌成分と紡錘形細胞の増生よりなる肉腫成分が観察された.以上より,子宮腺筋症由来の子宮癌肉腫と診断した.追加治療としてリンパ節郭清を予定していたが,術後1か月のCT検査で腹腔内に播種性病変を認め,化学療法に変更し6コース行い同病変は消失した.しかしながら,化学療法終了後4か月のCT検査では腹膜播種の再増大と肝転移を認め,術後11か月で原病死となった.
子宮腺筋症既往のある閉経後女性の急激な子宮増大は,稀ではあるが子宮癌肉腫も鑑別にあげ,慎重に臨床経過や画像検査を評価し,治療戦略を立案することが肝要である.また,子宮腺筋症の経過観察に際しては,患者に子宮腺筋症の悪性化の可能性について十分に情報提供を行い,定期的に婦人科を受診するように啓蒙することが重要である.
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