カルボプラチンはシスプラチンと比較して腎尿細管への毒性が低く,腎障害を発生しにくいことが知られている.これまでに腎生検を行い組織学的に証明されたカルボプラチンによる腎障害の報告は数少ない.今回我々はカルボプラチンが原因と考えられる尿細管間質性腎炎の一例を経験したので報告する.
症例は69歳女性,既往歴に高血圧,高脂血症,糖尿病,乳癌があった.子宮体癌(術前診断Stage IIIc)とS状結腸癌の重複癌に対して腹式単純子宮摘出術・両側付属器摘出術・播種病変の生検・S状結腸部分切除術を施行した.術後endometrioid carcinoma G3 pT4NxM1 Stage IVB(S状結腸表面ならびに腸間膜の播種病変)の診断となり後療法としてTC療法(パクリタキセル175 mg/m2,カルボプラチンAUC6)を開始した.1コース投与後,血液検査で腎機能低下を認めたが,自覚症状は認めず,腎機能に合わせて減量しながら3コース追加投与した.腎機能低下傾向が持続したためパクリタキセル単剤投与に変更した.変更後も腎機能は改善せず増悪傾向を認めた.尿中NAG・尿中β2MGの上昇から尿細管間質性腎炎が疑われ,被疑薬を中止し腎生検を施行した.腎生検では間質の均一な線維化を60%程度認めカルボプラチンによる尿細管間質障害として矛盾しない結果であった.プレドニゾロン20 mg/day内服による治療を開始したがeGFRは15 ml/min/1.73 m2前後で経過した.
カルボプラチン関連腎障害として本症例のような亜急性的な経過の報告は珍しく,腎生検による適切な診断と早期の治療介入が患者の予後を改善する可能性があるため診療科横断的な検討が必要である.
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