【緒言】梅毒は最近急増しているが一般産婦人科医にとっては診断経験の少ない疾患である.今回前医で性器ヘルペスと診断された梅毒の症例を2例経験したので報告する.【症例1】19歳,0妊0産.外陰部疼痛があり前医を受診した.性器ヘルペスと診断され抗ウイルス薬を処方されるも軽快せず当院初診となる.咽頭粘膜斑,硬性下疳,バラ疹,無痛性横痃,扁平コンジローマなどの身体所見より梅毒を疑い血液検査にて診断した.【症例2】16歳,0妊0産.外陰部疼痛があり前医を受診した.抗ウイルス薬を処方され軽快したとのことであった.その8か月後排尿痛があり当院を受診する.性器ヘルペスとしては非典型的な経過であり,梅毒を疑い血液検査にて診断した.【考察】Graberらにより「診断エラー」は見逃し,間違い,遅れの3種類に分類されるが,梅毒ではいずれも生じやすい.産婦人科では有症状の届出報告は比較的少なく,無症状の届出が多い.産婦人科では梅毒の診断が適切に行われていない可能性がある.梅毒は無症状になる時期があることから患者自身も性感染症と想起しないこと,また患者自身が性交渉歴を隠すことも考えられるため,医療者側から性交渉歴を積極的に問診し,性器ヘルペスなど梅毒との鑑別が難しい疾病が認められる場合やクラミジアや淋病など梅毒の感染に関連しやすい性感染症が認められる場合は,全身の身体所見を取り梅毒検査を行うことが重要と考える.
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