37歳3妊3産.最終月経より8週相当の異所性妊娠の疑いで当院に紹介された.初診時の血中hCG値は5,564 mIU/mLであったが経腟超音波検査で子宮体部に胎囊を認めず,子宮体下部左側に胎囊様の腫瘤を認めた.異所性妊娠または不全流産を考え,腹腔鏡及び子宮鏡で腹腔内と子宮腔内の観察を行った.子宮,付属器は正常大,異所性妊娠の所見はなかった.子宮腔内では術前に確認した子宮体下部腫瘤と一致する部位に胎囊様の腫瘤を認め一部摘出した.翌日の血中hCG値は8,655 mIU/mLと半減し摘出検体には絨毛組織はないが異型のない栄養膜細胞を認めたため不全流産と診断した.しかし術後1か月で血中hCG値が56,149 mIU/mLと再上昇し,腫瘤は5 cm大へ増大した.絨毛性疾患を考え,現病歴から月経整調(5点),先行妊娠が1年半前(4点)の正期産(5点),MRI,CT検査で転移なく病変が子宮体部に限局のため絨毛癌診断スコア14点となり絨毛癌と診断した.挙児希望がなく子宮限局病変であることから治療目的に腹式単純子宮全摘出術を施行した.子宮体下部腫瘤から絨毛癌組織が確認され,正期産後の子宮絨毛癌と診断した.化学療法1コース施行後に血中hCG値は陰性化し,3コース追加後(計4コース)再発なく経過している.挙児希望のない子宮限局の絨毛癌症例では,子宮摘出は考慮すべき治療法の一つであると思われた.
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