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第61巻 第1号

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症例報告
妊娠中期に頭痛を主訴としたリンパ球性下垂体炎
上原 彩子, 鈴木 理恵, 上原 一朗, 嘉治 真彦, 井澤 朋子
佐々総合病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 61(1):76-82, 2024
https://doi.org/10.60311/kjog.61-1.76

 リンパ球性下垂体炎は比較的稀な疾患であるが,妊娠中から産褥期にかけ発症することが多いと報告されている.今回妊娠22週に頭痛,脱力感,食欲不振を主訴として発症したリンパ球性下垂体炎を経験したので報告する.
 患者は44歳,1妊0産.顕微授精―胚移植にて妊娠成立.妊娠22週より頭痛,脱力感,食欲不振を自覚し,妊娠24週に当院神経内科を受診した.頭部単純CTで下垂体腫大を認め,脳神経内科,脳神経外科,内科併診のうえ産科入院となった.血液検査では,下垂体機能低下を認め,甲状腺ホルモン,副腎皮質ホルモンの投与開始となった.治療開始後は速やかに症状改善し退院となった.その後の経過は順調で妊娠38週に選択的帝王切開にて分娩となった.分娩方法は経腟分娩も提案したが,下垂体卒中を考慮し患者の希望もあったため帝王切開を選択した.産後に頭部造影MRIを施行し下垂体炎の診断となった.内科におけるホルモン補充に加え,産後月経が再開せず更年期症状を認めたため,婦人科においても卵胞ホルモン・黄体ホルモン併用療法を開始し現在も治療継続中である.
 リンパ球性下垂体炎による下垂体機能低下症合併妊娠を経験した.下垂体機能低下は全身状態不良となるが適切なホルモン補充により症状は軽快し経過観察も可能である.妊娠中に頭痛や食欲不振を認めることは稀ではないが,持続する場合は画像検査も含め精査が必要と考えられた.分娩方法の選択については指針がなく,所見や状態をみながら症例ごとに方針を検討するべきである.

Key words:Lymphocytic hypophysitis
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