【目的】広汎子宮頸部摘出術(radical trachelectomy:RT)後の月経変化は一定の割合で発生するが,その妊娠成績への影響に関しての報告は限定的である.今回,当科でRTを施行した症例について月経変化が妊娠成績に及ぼす影響について検討した.
【方法】2002年9月から2021年3月に当院で腹式RTを施行した289例を対象とし,手術前後での月経変化(月経量,持続日数,月経周期,月経痛の変化および無月経)の有無を診療録より調査した.さらに月経変化と妊娠成績の関連について統計学的に解析を行った.
【成績】RTを施行した289例中102例(35.3%)が手術後に月経変化を認めていた.その内訳は月経痛が38例(13.1%),月経量減少もしくは持続日数の短縮が35例(12.1%),月経不順が29例(10.0%),持続日数延長が15例(5.2%)であった(重複あり).また無月経が14例(4.8%)に生じ,うち6例が子宮性無月経と診断された.月経変化のあった群では,月経変化のない群と比較し頸管狭窄の頻度が有意に高かった(56例54.9% vs 21例11.2%,p<0.001).さらに月経変化のあった群では妊娠率は有意に低く(24例23.5% vs 72例38.5%,p=0.013),不妊治療を必要とした症例の割合が高かった(46例75.4% vs 73例57.9%,p=0.023).最後に,月経変化のあった群での流産率は有意に高く(11例45.8% vs 15例22.1%,p=0.036),周産期合併症(切迫流早産,早産期前期破水,絨毛膜羊膜炎,胎盤位置異常など)の頻度が高い傾向を認めた(18例85.7% vs 40例61.5%,p=0.059).
【結論】RT施行後の月経変化は妊娠成立およびその維持に影響を及ぼすことが示唆された.
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