【緒言】ホルモン感受性陽性乳がんでは長期間の術後内分泌療法が行われるため,加齢による経時的な妊孕性低下や周産期リスクの上昇が懸念される.当院では挙児希望のある乳がん患者に術後内分泌療法を中断し,期間を限って生殖医療を行っている.今回我々は術後内分泌療法中断の安全性と有効性を明らかにするため,当院での内分泌療法中断患者について検討を行った.【方法】2013年1月から2022年12月に当院がん・生殖医療外来を受診され,当院での中断許可基準に基づき,術後内分泌療法を中断したホルモン受容体陽性の乳がん患者56例を対象とした.妊孕性温存胚の有無,妊娠率,生児獲得率,流産率および再発率について診療録から後方視的にデータを収集し検討を行った.本研究は当院の生命倫理委員会の承認を得ている.【結果】中断までの術後内分泌療法を行った期間は26.4+0.89か月であった.妊娠は35/56例(62.5%),生児獲得は27/56例(48.2%)であった.3/56例(5.4%)に中断中の転移・再発を認めた.【考察】内分泌療法中断を希望された場合,年齢・卵巣予備能・妊孕性温存の有無などから妊娠の可能性を評価の上,中断の可否を慎重に判断し,患者・家族にもリスクを十分に説明する必要がある.内分泌療法の中断は加齢による不妊症を回避する方法となり得るが,長期的な安全性を知るために更なるフォローアップが必要である.
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