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第61巻 第4号

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症例報告
無痛分娩における硬膜外カテーテル留置後に硬膜外膿瘍を来し腰椎部分椎弓切除に至った2型糖尿病合併妊娠の一例
荻野 賢介, 吉田 梨恵, 村上 楠菜, 小暮 健二郎, 藤村 正樹
東京医科大学茨城医療センター産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 61(4):377-383, 2024
https://doi.org/10.60311/kjog.61-4.377

 硬膜外膿瘍は硬膜外穿刺および免疫抑制状態を背景に発生しうる稀な深部感染症であり,重篤な神経障害を生じることがある.今回,糖尿病合併妊娠に対し無痛分娩目的に硬膜外穿刺を施行し硬膜外膿瘍を発症した症例を経験した.
 症例は32歳1妊.糖尿病でインスリンポンプを使用していた.妊娠経過は順調で妊娠39週2日に計画無痛分娩目的で入院,硬膜外カテーテルを挿入し分娩誘発を開始した.入院3日目に両下肢の痺れおよび刺入部の疼痛による上体屈曲不能となったため,硬膜外カテーテルを抜去し再挿入を試みたが疼痛が強く中止.無痛分娩を中止し妊娠39週6日に経腟分娩に至った.産褥1日目に神経学的所見を伴わない左下肢痛を認め,産褥3日目に疼痛増強,軽度の左大腿痛覚鈍麻を認めた.腰椎MRIを施行したところL2~4の硬膜外血腫や膿瘍の可能性が示唆された.整形外科医と協議し膀胱直腸障害および運動麻痺が出なければ保存的加療の方針であったが,同日の血液検査で炎症高値を認めた.抗菌薬投与を開始するも疼痛増悪,及び疼痛範囲が左下肢から腰部にまで拡大したため手術の方針となった.産褥5日目に腰椎部分椎弓切除術施行,術中所見で硬膜外膿瘍の診断となり膿瘍ドレナージ,洗浄を行った.起因菌に対し3週間抗菌薬投与を施行し退院,神経学的後遺症なく治癒した.
 硬膜外カテーテル留置に伴う硬膜外膿瘍は稀な疾患だが,リスクのある妊婦では特に注意が必要であると考えられた.

Key words:epidural abscess, epidural puncture, painless delivery
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