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第61巻 第4号

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症例報告
妊娠中期に発症し,MRIで診断した一過性大腿骨頭萎縮症の1例
安藤 美貴子1), 岩原 由樹1), 平尾 昌之2), 尾臺 珠美3), 関口 将軌1), 寺内 公一3), 宮坂 尚幸1)
1)東京医科歯科大学病院産婦人科
2)東京医科歯科大学病院整形外科
3)東京医科歯科大学茨城県地域産科婦人科学
関東連合産科婦人科学会誌, 61(4):384-391, 2024
https://doi.org/10.60311/kjog.61-4.384

 一過性大腿骨頭萎縮症(TOH)は外傷や炎症などの誘因のない股関節痛と大腿骨頭の骨萎縮を特徴とし,多くは安静と負荷制限で保存加療が可能な疾患である.女性では妊娠期に好発するが,理学所見からの診断は容易ではなく治療法は確立していない.今回妊娠中期に左股関節痛が出現しTOHと診断した1例を経験したので報告する.症例は34歳,1妊0産.妊娠20週に誘因なく左臀部痛が出現,次いで左足関節痛・左股関節痛・左大腿痛が出現し,痛みの増悪で妊娠32週に歩行困難となり当院紹介初診となった.鎮痛薬投与を行ったが症状改善せず妊娠36週でMRIを施行した.左大腿骨頭は関節面を主体にSTIR画像高信号,T1強調画像低信号を示しTOHと診断した.左股関節痛と骨萎縮が強いことから経腟分娩は困難と判断し,妊娠36週4日に陣痛発来したため緊急帝王切開術を施行し2,286 gの女児を娩出した.帝王切開後は骨吸収亢進のリスクを考慮し,カベルゴリンの投与で断乳した.帝王切開後8日目の骨密度検査では左大腿骨近位部の骨量が右と比較して低値であった.帝王切開後12日目にリハビリテーションのため転院した.帝王切開後22週には自立歩行可能となり,帝王切開後29週には日常生活が可能になった.妊娠中に股関節痛を認めた場合には本疾患を鑑別に挙げ,大腿骨頸部骨折を防ぐためMRIにより早期に診断し加療を行う必要がある.

Key words:Transient osteoporosis of the hip, Hip pain, Conservative therapy, Magnetic resonance imaging, Pregnancy
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