妊娠,手術,心房細動,静脈血栓塞栓症(Venous thromboembolism:VTE)の既往,COVID-19感染はそれぞれ血栓リスクを上昇させることが知られている.今回これらを合併し,妊娠初期に3度目の深部静脈血栓症(Deep venous thrombosis:DVT)を再発した妊婦の周産期管理を行ったので報告する.
40歳,2妊1産.凍結融解胚移植で妊娠成立.妊娠7週6日に左膝屈側から左大腿部内側に自発痛が出現し近医内科を受診,左大腿静脈以遠に新鮮血栓を指摘され当院紹介受診.これまでに帝王切開術後と,腹腔鏡下左卵巣囊腫核出術後とで2回DVTを発症し,一定期間抗凝固療法を行っていた.初診時にCOVID-19感染も発覚し同日緊急入院となった.下肢静脈超音波検査で左外腸骨静脈から膝窩静脈にかけて広範なDVTを認め,未分画ヘパリンの投与を開始した.入院中に発作性心房細動を発症しベラパミルの投与にて軽快した.未分画ヘパリンによる治療を行ったがDVTは消失せずDダイマーも陰転化したため,入院66日目に未分画ヘパリンの点滴(2.7万単位/日)から未分画ヘパリンの皮下注射(3万単位/日)に切り替えて外来管理とした.通院中は血液検査と下肢静脈超音波検査を定期的に行った.妊娠36週で再入院し未分画ヘパリンの点滴に切り替え,妊娠37週で選択的帝王切開を行った.術後1日目に未分画ヘパリンの点滴を再開したがDダイマーの上昇を認め,造影CTで肺血栓塞栓症(Pulmonary embolism:PE)およびDVTが指摘された.術後5日目にエドキサバン60 mgの内服に切り替えて退院とした.3か月後の造影CTにて血栓の消失を確認し内服を終了した.
VTEの既往はVTE発症の強いリスク因子であり,妊娠成立時点あるいは妊娠初期のなるべく早期からの抗凝固療法を積極的に検討すべきである.
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