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第61巻 第4号

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症例報告
子宮筋腫合併妊娠の筋腫変性によってDICを来した1例
藤本 新, 伊藤 翼, 大塚 由花, 今氏 晶梨, 髙田 美乃莉, 田邉 利砂, 西村 想子, 宮本 守員, 鈴木 理絵, 笹 秀典, 髙野 政志
防衛医科大学校産科婦人科学講座
関東連合産科婦人科学会誌, 61(4):436-441, 2024
https://doi.org/10.60311/kjog.61-4.436

 子宮筋腫合併妊娠の頻度は約10%であり,周産期合併症のリスクが上昇することが知られている.妊娠中に変性筋腫による播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を発症した症例を経験したので報告する.
 35歳,2妊0産,卵管間質部妊娠に対して開腹右卵管角楔状切除術・卵管切除術の既往あり.妊娠25週4日に下腹部痛を主訴に当科を受診した.バイタルサインに異常はなく経腹超音波断層法で児や胎盤に異常所見はなかった.鎮痛薬を投与し下腹部痛は改善したがDICを発症していた.骨盤部単純MRIで常位胎盤早期剝離や子宮破裂は指摘できず,6 cm大の変性筋腫を確認した.DICの原因が変性筋腫であると判断し,新鮮凍結血漿,フィブリノゲン製剤,濃厚血小板を投与した.症状と検査所見が改善したため第6病日に退院とし,その後DICは再発せずに経過した.妊娠38週3日に選択的帝王切開術および筋腫核出術を施行した.児に明らかな異常所見はなく,核出した変性筋腫は内部が一部液状化しており,病理組織学的診断は壊死を伴う変性筋腫であった.
 DICは早期診断と治療を要する病態であり,妊娠中の変性筋腫が原因となることは非常に稀である.治療の原則はDICの原因の除去であるが,本症例は発症時に外科的加療をせず,輸血による保存的加療で妊娠を継続し良好な転帰を得た.

Key words:Disseminated Intravascular Coagulation, Myoma, Degeneration, Pregnancy
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