【緒言】前置血管の診断は経腟超音波断層法でのカラードプラ法により行われることが多い.しかし,妊娠後期では診断が容易ではない.また,分娩方法決定時期について一定の見解はない.今回,妊娠後期に前置血管と診断したが,経時的な評価によりmigrationしたことを確認し,経腟分娩に至った症例を経験した.
【症例】30歳,2妊0産.妊娠29週に前置胎盤,前置血管が疑われ,当院へ紹介になった.経腟超音波断層法で辺縁前置胎盤と,卵膜上を走行する胎児血管を内子宮口付近に認めた.また,妊娠33週で行った骨盤部単純MRIでは,児頭に先進して内子宮口付近を走行する血管を認めた.以上より前置血管と診断し,帝王切開の方針とした.妊娠34週に低置胎盤,妊娠36週に常位胎盤になり,児頭が骨盤内に陥入し,胎児血管が児頭先進部より子宮体部側に移動した.本人と相談の上,経腟分娩を目指す方針とした.その後も内子宮口付近に胎児血管がないことを複数回確認した.分娩進行中の胎児機能不全のリスクを鑑み,妊娠40週4日に陣痛誘発を行い,経腟分娩に至った.
【結語】妊娠後期の前置血管の診断では,骨盤部単純MRIを併用することでより正確な血管の走行を把握できる可能性がある.前置血管の分娩方針は基本的に帝王切開であるが,経腟超音波断層法で経時的に評価し内子宮口から十分に血管が離れたことを確認できれば,経腟分娩施行も許容されると考える.
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