今回我々は,Extended-spectrum β-lactamase(以下ESBL)産生大腸菌による帝王切開後子宮創部離開の1例を経験したので報告する.38歳1妊0産,ベトナム国籍.妊娠16週に妊娠糖尿病で紹介された.妊娠37週6日前期破水で入院し妊娠38週1日分娩誘発を希望した.胸部X線検査で肺に浸潤影を認め,胸部CT検査で陳旧性結核性胸膜炎を疑う所見があり,3日間の喀痰検査を施行し陰性を確認した.その後,分娩誘発不成功のため,緊急帝王切開術を施行した.開腹手術既往のため腹腔内癒着を認めた.胎盤病理検査で,StageIIの絨毛膜羊膜炎・臍帯炎を認めた.術後1日目から弛張熱を認め,抗生剤をセファゾリンからフロモキセフに変更した.術後2日目に血液培養検査でESBL産生大腸菌が検出され,術後3日目にピペラシリン/タゾバクタムに変更した.術後8日目発熱が続きメロペネムに変更した.同日造影CT検査にて創部離開が判明し,子宮切開創デブリードマン,再縫合術を施行した.帝王切開術後18日目,再開腹術後10日目に退院した.創部は脆弱であり,次回の妊娠は子宮破裂のリスクが高いことを説明した.従来,ESBL感染症は院内感染が多いと考えられてきたが,市中感染が増えてきており,産科領域でも,ESBL産生菌を考慮した抗生剤選択が必要であり,感染巣制御に外科的治療も躊躇しないことが肝要である.
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