妊娠中の貧血や血小板減少の鑑別疾患は多く,除外診断や侵襲的な検査を要することから確定診断に至らない症例もある.骨髄異形成症候群(Myelodysplastic Syndromes:MDS)は無効造血に由来する血球減少および腫瘍性の芽球の増生を特徴とする疾患であり,妊娠中に増悪した報告が見られるが,確定診断には骨髄穿刺を要する.無侵襲的出生前遺伝学的検査(Non-invasive prenatal genetic testing:NIPT)は母体血漿中に存在する胎児由来のcell-free DNAを検出することで胎児染色体の数的異常や微小欠失を診断する検査である.今回NIPT受検を契機に母体の染色体の微小欠失が指摘され,本人希望により妊娠中の骨髄検査は実施できなかったが,二系統の血球減少を認めMDSを疑い,適切な輸血管理を行い正常経腟分娩に至った症例を経験した.本症例ではNIPTを受検したことからMDSなど一部の血液疾患に見られる染色体異常が母体に発見され,確定診断こそ得られなかったものの臨床経過および他の鑑別疾患を除外することでMDSを強く疑って診療することが可能となった.今後このようにNIPTを契機に母体の染色体異常が指摘される場合に備え,カウンセリングなどを含めた施設間での連携を取りながら領域横断的な管理が求められる.
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