自己免疫性中枢神経系の脱髄疾患である多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)は生殖年齢女性に好発するため,Preconception careを考慮した治療や,計画的妊娠が必要となる.
今回我々はDisease-modifying therapy(DMT)として,ナタリズマブを不妊治療中から投与した難治性MS患者で,生殖補助医療により妊娠出産した症例を経験したので報告する.患者は初診時33歳,0妊.23歳でMSを発症.ステロイドパルス療法を数回,DMTとしてインターフェロン療法,急性期治療としてフォンゴモリドを投与されたが,再発を繰り返したため,ナタリズマブが導入された.導入後寛解を得て,1年9か月後から不妊治療を開始した.人工授精を5回実施して不成功であり,体外受精を開始した.合計5回の採卵において,調節卵巣刺激はGnRH antagonist法またはProgesterone-primed ovarian stimulation法を用いた.7回目の胚移植で妊娠成立し,妊娠40週,帝王切開分娩にて,生児を獲得した.
MS患者が不妊治療を受ける場合に,生殖補助医療の実施やGnRHアゴニストの使用は,疾患の再発因子になることが文献上指摘されている.本症例は,4年以上の不妊治療期間中にMSの再発なく妊娠出産に至りナタリズマブ開始することで産後の再発も認めなかった.
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