妊娠中に卵巣子宮内膜症性囊胞を伴う頻度は約0.5%とされるが,近年増加傾向である.今回,卵巣子宮内膜症性囊胞合併妊娠において,帝王切開後に卵管卵巣膿瘍となり,腹腔鏡下手術を要した1例を経験したので報告する.
症例は29歳,1妊0産.径9 cmの左卵巣子宮内膜症性囊胞の経過観察中に自然妊娠が成立した.妊娠39週3日に陣痛発来で入院となったが,分娩進行が乏しく臨床的絨毛膜羊膜炎の診断で,妊娠39週5日に緊急帝王切開となった.術中に囊胞破裂の所見があり,腹腔内を十分に洗浄した.術後7日目に退院したが,術後14日目に38℃台の発熱と下腹部痛で再入院となった.CRP 9.97 mg/dL,WBC 10,110/μLと炎症数値の上昇を認め,造影MRIで囊胞の壁肥厚と造影効果を認めた.卵巣膿瘍の診断で抗生剤治療を開始した.しかし改善に乏しく,保存的治療の継続は困難と判断し,第11病日に腹腔鏡下左付属器切除術を施行した.術後経過は良好で術後8日目に退院した.
本症例は,分娩時の子宮内感染や帝王切開の操作により,卵巣子宮内膜症性囊胞に感染が波及し,膿瘍化したと考える.保存的治療が奏効しない場合,外科的治療が必要であり,腹腔鏡下手術は病巣除去だけでなく,低侵襲で細部の観察も可能である点から有用である.経腟的ドレナージや二期的手術も選択肢であり,個々の背景に応じて検討する必要がある.
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