杯細胞カルチノイドは,ほとんどが虫垂に発生し卵巣転移を多く認める疾患である.杯細胞カルチノイドは特異的な臨床所見を呈さず,画像診断における特徴的な所見も認めないため,術前に本疾患と診断することは困難である.今回,術前診断が困難であり術後に虫垂原発杯細胞カルチノイドと診断された転移性卵巣腫瘍を経験したため報告する.症例は62歳,1妊1産.検診で骨盤内腫瘤を指摘され,近医で卵巣腫瘍を疑われたため当院を紹介受診した.骨盤部MRI検査で径15 cmの充実性腫瘍を認めた.下部消化管内視鏡検査では明らかな異常所見を認めなかった.原発性卵巣腫瘍の術前診断で単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,大網切除術,腸間膜生検を施行し,術中に虫垂の軽度腫大および硬結を認めたため虫垂切除術を追加した.術後の病理組織診断では虫垂原発杯細胞カルチノイドであった.本症例では術前診断が困難であったが,術中所見から虫垂切除を行ったことで確定診断に至った.術前検査で卵巣原発腫瘍と推定された場合でも術中に虫垂の所見を確認し切除も検討する必要がある.
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