卵巣成熟奇形腫は1~2%が悪性転化を来すとされるが,約80%が扁平上皮癌,次いで腺癌であり,その他の組織型は少ない.今回,卵巣成熟奇形腫が未分化癌に悪性転化した1例を経験したので報告する.
症例は55歳.3妊3産.50歳閉経.20代から卵巣腫瘍を前医で経過観察されていた.急激な下腹部痛で当院へ救急搬送された.MRIで卵巣成熟奇形腫の悪性転化を疑われ,CTでも傍大動脈リンパ節の腫大を認め,腹式単純子宮全摘+両側付属器摘出+骨盤リンパ節生検+傍大動脈リンパ節生検+大網部分切除術を実施し,完全切除であった.
術後病理では,特定方向への分化を欠き,背景に成熟奇形腫の病態を伴うことから卵巣成熟奇形腫の未分化癌への悪性転化と診断され,進行期はIIIA1(ii)期であった.術後化学療法としてTC療法を6サイクル実施するも多発リンパ節転移を認め,ゲムシタビン+ベバシズマブによる2次治療を8サイクル継続し,担癌状態であるが治療開始から14か月経過している.
卵巣成熟奇形腫の悪性転化は予後不良とされるが,完全切除に至った症例では生存予後の延長が報告されている.また,組織型によってはTC療法以外での治療例の報告されているが,治療方針に一定の見解が得られていない.特に未分化癌への悪性転化の報告は少なく,予後予測や化学療法の最適化のために新規治療報告およびその解析が望まれる.
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