早発卵巣不全(Premature ovarian insufficiency;POI)は40歳未満で正常な卵巣機能が失われ,低エストロゲンおよび高ゴナドトロピン状態を伴う無月経を特徴とする.その中でも卵巣手術等による医原性POIでは症状が急激に起こり,その改善にホルモン補充療法(Hormone replacement therapy;HRT)が有用とされる.症例は40歳.左卵巣成熟奇形腫合併妊娠のため当院で妊娠管理し,妊娠38週に経腟分娩となった.産褥1か月健診の経腟超音波検査で対側の右卵巣に11.0 cm径の充実性腫瘍を認め,MRIや造影CTを行い,胃癌の転移性卵巣腫瘍を疑われた.上部消化管内視鏡下生検を行い,胃癌と診断した.化学療法開始直前に両側卵巣腫瘍茎捻転を合併し両側付属器摘出術を行った.病理組織診断では左卵巣は成熟奇形腫,右卵巣は転移性卵巣腫瘍であり,進行期はStageIVと診断された.術後2週間より化学療法を開始となったが,医原性POIによるエストロゲン欠落症状に対する不安感を訴え,余命のQOLを向上させる目的でHRTの方針とした.原疾患を理由にHRTを終了するまでの間,症状を認めなかった.本症例のように予後不良の担癌患者における医原性POIではHRTを行うことは限られた余命のQOLの向上・維持の観点から重要であると考えた.
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