帝王切開瘢痕部妊娠(Cesarean scar pregnancy:CSP)に対する確立した治療法はない.当院では妊孕性温存を希望する患者に対し,メソトレキセート(methotrexate:MTX)局所療法を第一選択とし,経腟的に穿刺し胎囊内容を吸引後,胎囊周囲にMTX 20 mgを局注している.2012年1月から2023年12月の間に当院で管理したCSPのうち,初回治療にMTX局所療法を施行した17例を対象に,母体背景,治療転帰および治療後の妊娠転帰を後方視的に検討した.MTX全身投与を含む追加治療を要さなかった症例を治療成功と定義した.解析対象の母体平均年齢は34.2±5.5歳,既往帝王切開回数の中央値は2回(range:1~3)であった.治療時の平均妊娠週数は8.0±1.1週,治療前の平均血中hCG値は66,895±39,365 mIU/mlであった.初回治療単独による治療成功は11例(65%)であり,6例(35%)は追加治療を要した(3例:MTX全身投与,2例:子宮動脈塞栓術,1例:子宮全摘術).血中hCG値の陰転化までの日数は125±60日であった.治療後に妊娠成立した4例はいずれも満期産で生児を得ていた.4例とも癒着胎盤および子宮破裂の合併は認めなかった.本治療は妊孕性温存希望のCSPに対する有効な治療法の1つであると考えられた.
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