性暴力は,被害者の身体的のみならず精神的なダメージも大きく,日常生活や職業をも脅かす社会的問題である.近年,性暴力被害者や支援団体が声を上げ,社会全体でそれらを根絶する気運が高まっているにも関わらず,実際に認知される性被害事例は多くない.本邦で強制性交等を受けたことがあるとされるのは女性の8.1%,男性の0.7%と推測され,加害者の約7割は被害者と面識があることがわかっている.今回我々は,過去13年間に警察同伴で当院を受診した性暴力被害女性152人の背景や感染症検査,再診率等について後方視的に検討した.被害者は20歳代が49%,学生が36%で最も多かった.70%は加害者と面識がなく,被害後6時間以内に警察同伴で当院を受診したのは22%であった.初診時感染症検査は性器クラミジアPCR陽性率が17.3%と最も高かったが,再診し抗菌薬治療により陰性化が確認できたのは24%であった.本検討より,性被害者の背景は多様であり性暴力は被害者の背景や加害者との関係を問わず,どのような場所でも起こりうる重大な社会的問題であることが再認識された.性暴力被害者の速やかな身体的・精神的回復を得るためには,被害後に速やかに医療機関を受診でき,再診率をあげる体制の整備が肝要である.また,医療者は被害者心理に配慮した医療を提供するだけでなく,変遷する国や各自治体の支援体制も把握しておくことが望ましい.
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