上腸膜静脈血栓症は稀な疾患であるが,時にうっ血性腸管壊死をおこし致死的な経過をとる.今回我々は,帝王切開術後に上腸間膜静脈血栓症を発症し保存的加療にて良好な経過をとった一例を経験したので報告する.症例は34歳,2妊1産.第1子を帝王切開術で分娩後に腹創部の潰瘍が出現し,壊疽性膿皮症の診断でステロイド治療歴があった.既往帝王切開後妊娠のため妊娠38週2日に予定帝王切開術で2,550 gの女児を分娩した.術後3日目に発熱,炎症反応とDダイマーの上昇,上腹部痛を認めた.創部に発赤腫脹はなく,内診と超音波検査でも特記すべき異常はなかった.熱源・腹痛精査のため造影CT検査を施行し,上腸間膜静脈血栓症と診断した.腸管壊死を疑う画像所見は認めず,ヘパリンナトリウム持続静注による保存的加療の方針としたが,術後9日目に性器出血を認めたため中止となった.術後17日目の造影CT検査にて血栓増大があり,エドキサバントシル酸塩水和物30 mgの内服を開始した.再出血がないことを確認し術後23日目に退院,外来にてDダイマーの陰性化,血栓の消失を確認し内服加療を終了とした.本症例では速やかに造影CT検査を施行したことにより腸管壊死に至ることなく早期に治療介入が行えた.上腸間膜静脈血栓症は稀な疾患であるが重大な転帰をとる可能性があり,特に産褥や帝王切開後の上腹部痛の鑑別疾患のひとつに挙げるべきである.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp