頸部が腫大している筋腫分娩に対する全腹腔鏡下子宮全摘術(以下TLH)では,子宮筋腫により腟部が展退していることから,適切な位置での腟管切開が困難なことがある.
症例1は45歳,過多月経を伴う筋腫分娩を認め,根治術目的にTLHを行った.子宮筋腫が腟内を占拠し頸部は腫大していた.子宮をVagi-パイプⓇで挙上しながら上部靭帯を処理,子宮傍結合織を凝固切断した.経腟操作に移行し,筋腫分娩状態の子宮筋腫を細切して摘出し,展退した腟部をZ縫合し縫縮閉鎖した.さらにその縫合糸をVagi-パイプⓇを通して牽引することで腟円蓋とVagi-パイプⓇを密着させた.腹腔鏡操作にてVagi-パイプⓇにより強調された腟管を全周性に切開し子宮を切離した.子宮頸部に欠損はなかった.
症例2は47歳,不正出血を伴う子宮から連続する腟内腫瘤を認めた.筋腫分娩が疑われたが,子宮肉腫の可能性が否定できないことからも,診断目的,症状緩和目的にTLHを施行した.症例1と同様の方法で行った.腟部を縫合閉鎖しているため,腹腔内に腫瘍が露出することなく,子宮を摘出しえた.
頸部が腫大している筋腫分娩に対するTLHで腟円蓋を正しく認識する方法として,展退した腟部を縫縮し通常の子宮頸部の形態に近づけ,さらに縫合糸をVagi-パイプⓇを通して牽引するという方法を提示した.これにより適切な腟管切開を行うことができた.
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