腸回転異常症は胎生期に中腸の回転・固定の異常により発生する稀な疾患ではあるが,手術を契機に腸閉塞を合併することがある.今回,手術により腸閉塞を合併した症例,前例の経験により合併症を防ぐことができた腸回転異常症の2症例を経験したため発表する.
症例1は54歳,女性.腸閉塞既往あり.子宮頸癌IA1期に対し準広汎子宮全摘+両側付属器切除+骨盤リンパ節郭清を施行した.術中上腸間膜を中心に小腸間膜が一部捻転するように周囲の腸間膜と癒着していた.手術終了16時間後に血圧低下,頻脈を認め,造影CTにて小腸軸捻転による腸管血流障害と診断し,緊急手術となった.腸回転異常症による中腸軸捻転と判断し,壊死腸管切除,空腸人工肛門造設,結腸粘液瘻造設を施行した.症例2は59歳,女性.合併症に腸回転異常症あり.子宮体癌IA期と診断,術前検査にて注腸造影検査を施行し,右側結腸の左側偏位を認めた.症例1を3年前に経験したことを踏まえて消化器外科に相談し,術中の腸管位置確認と整復を予定した.開腹時診断通りの所見を得て,予定手術に加え腸整復と虫垂切除を行って手術を終了,術後経過は良好であった.腸回転異常症は稀な疾患であるが,手術を契機に腸管の虚血壊死を起こすことがあるため,腸閉塞症状を反復している場合は本疾患を念頭に十分な検査,診断が必要である.
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